岩手茅葺伝承委員会
最終更新日:2020年07月08日
岩手茅葺伝承委員会は、平成25年2月11日を以て解散いたしました。
これに伴い、当委員会が保有していた資料の一切を有限会社 南部萱へ移管しましたので、併せてお知らせします。
また当委員会で行ってきた「茅と茅葺き相談窓口」も有限会社 南部萱が引き継ぐ事となりましたので、向後、茅葺きや茅葺きの資料に関するお問い合わせ・ご相談は、有限会社 南部萱までご連絡ください。
この団体の目的
特定非営利活動法人岩手で茅葺き技術の伝承を促進する委員会は、当初掲げた主な目的をほぼ達成しましたので、2009年の年初、総会においてNPO法人の解散を決議し、清算人に代表が選任されました。その後、清算人は、所定の解散手続き逐次進めてきましたが、2009年5月26日付で岩手県知事へ清算結了届を提出し、解散に関する一切の手続を終了しましたので、特定非営利活動法人岩手で茅葺き技術の伝承を促進する委員会は円満に解消しました。
なお、これと並行して、旧NPO法人の主要メンバーによる任意団体「岩手茅葺伝承委員会」を設立しましたが、今後この団体がより自由な立場で、旧法人が目指した岩手における茅葺産業の発展、茅と茅葺に関する情報の交流を促進して、北東北地方を中心とするわが国の伝統的茅葺民家の保存に貢献するための活動を継続することとしました。このため、旧法人のホームページも同様に継承します。
委員会活動のこれまでの成果と今後の目標
活動の成果
私どもは、活動をはじめた2000年ころから2008年ころまでの間に、
- 岩手県内に茅の企業的生産・供給体制を確立すること
- 地元の茅葺職人を養成すること
- 地元の茅と茅葺職人を使って茅葺業務を行う専門企業を立ち上げること
を主な目標にして活動してきましたが、それぞれの目標について次のような成果を挙げることができました。
1.茅の生産
茅葺職人を育成するためには、まず地元に職人が自由に使える茅がなくてはならない、と考えた私たちは、岩手県内にいくつかの茅場適地を探索した結果、県央の金ケ崎町六原・千貫石地区の遊休県有地(総面積290ヘクタール、うち元岩手県肉牛生産公社が使用していた造成草地157ヘクタール)に辿りつきました。ここを将来の茅場に仕上げるべく、数年かけて、山茅(芒:ススキ)の企業的生産モデルの開発に取り掛かり、なんとか成功を収めました。
この企業的生産モデルの開発成功を受けて、千貫石地区で茅の企業生産を始める企業体の立ち上げを目指して岩手県と地元金ケ崎町に働きかけた結果、金ケ崎町の第三セクターである金ケ崎町産業開発公社で事業を行うことになり、同公社は、私たちの開発したモデルに沿って山茅の生産事業を開始しました。ここで生産された山茅が「南部茅(なんぶがや)」という銘柄で出荷されるようになって既に数年が経過しましたが、生産・販売ともに順調に進展しており、黒字経営を実現しています。
こうして、岩手県内に茅の商業的生産基地を立ち上げるという私たちの目標の一つは、どうにか実現することができました。
2.地元茅葺職人の養成
茅の地元生産の見通しがつくと、いよいよ茅葺職人の養成が緊急な課題となりました。私たちは、茅葺棟梁や専門企業の意見を聞きながら、経験のない若い世代に茅葺の基礎技術を習得させるためのプログラムを作成しました。
岩手県は茅場開発活動を通じて私たちの運動の意義を認め、私たちの茅場開発活動や茅葺職人養成プランを支援するため、3年間にわたる茅文化保存システム支援事業を採択、金ケ崎町に事業予算の半額を助成しました。町は残りの半額を負担し、金ヶ崎町の事業としてこれを実施しました。その目玉は茅葺職人養成事業でしたが、町は、これを私たちNPO法人岩手茅葺促進委員会に全面委託しました。
町の委託を受けて、私たち委員会は、3年間の茅葺職人養成プログラム(現場研修、集合研修、先進地視察研修)を作成・実施し、その結果、岩手県内及び隣接地域出身の5人の若手茅葺職人(「南部茅葺士」の称号授与)を世に送り出すことができました。うち1人は諸事情から他職に転じましたが、他の4人は、現役の茅葺職人として仕事を始めており、既に県内外を問わず、全国を股にかけて多くの茅葺工事をこなして技術を磨いています。こうして彼らを核にした若い職人集団が形成されるようになり、今では数組の茅葺職人集団が日々茅葺の仕事に励んでいます。
3.地元茅葺専門企業の立ち上げ
こうして地元岩手県内で調達できるようになった山茅と茅葺職人を使って茅葺を事業として展開する専門企業の立ち上げが最後の課題となりましたが、幸い、私たち委員会の活動を通じて、地域の伝統的文化財である茅葺民家の保存に熱意をもつ若い経営者が現れ、(有)南部萱という茅葺専門企業が発足しました。
設立以来数年を経てその基礎も固まり、県内外の茅葺工事の請負、山茅の販売などの事業を展開しており、今後の発展が期待されます。
行政とNPOの協同事業の成果
このように私たちの委員会活動は、活動当初に掲げた目標を達成することができましたが、これは偏に、行政と民間の協同事業がうまくかみ合ったからにほかなりません。
私たちNPOグループが、茅葺棟梁、茅葺企業、岩手県、金ケ崎町、滝沢村、茅葺関係学識経験者、その他多くの関係者、関係機関と、それぞれの場面でうまく協同できたことが、これまでの成果に繋がったのだと言えます。
岩手茅葺伝承委員会の今後の活動目標
委員会は、以上のようなこれまでの成果を踏まえ、ひろく茅葺産業の発展と茅葺民家の伝承に貢献する活動として次のような課題に取り組みます。
1.茅場の開発管理に関する技術的経営的助言・支援活動
- 金ヶ崎町千貫石茅場の管理改良、茅の収穫及び保管、茅の品質改善、茅の販売などに関する技術的経営的助言、勧告及び指導
- 茅場の開発造成などに関する技術情報の提供
2.茅及び茅葺に関する情報の交流・提供
3.茅葺職人及び茅葺企業に対する関係情報の提供及び助言
4.その他茅葺民家、茅葺建造物の伝承に関すること
茅葺事業振興協議会における委員会の役割
委員会は、北東北における茅と茅葺産業の健全な発展がわが国の茅葺民家の伝承に大きく貢献すると見なしていますので、これまでの委員会活動を通じて形成された地元の茅の生産企業や茅葺職人、茅葺関係企業との密接な関係を今後も継続・発展させることが重要と考えています。そのため、既に発足している関係企業と委員会をメンバーとする協議体「茅葺事業振興協議会」の世話役としての役割を果たしたいと考えています。
委員会は、上記の役割を果たすために協議会の事務局を担当し、関係企業の事業活動に役立つ情報の収集と交流、企業活動に関する助言・提言などを行っていきます。
茅と茅葺情報の提供
これまでの活動を通じて委員会が蓄積した以下のような茅および茅葺関係の記録資料を、希望される方には実費にて提供いたします。
● | 「岩手のかやぶき」DVD | 配布実費(送料込み):1,500円 | |
約77分(日本語・英語解説 各約15分、技術編 約47分) | |||
● | 「茅葺叢書」 | ||
1.隅田隆蔵棟梁覚書 | 配布実費(送料込み):1,000円 | ||
2.日野杉栄棟梁語録 | 配布実費(送料込み):1,000円 | ||
3.南部茅場創りの歩み - 平成の「やまがや」の里を育む | |||
…現代的茅場開発管理技術の記録 配布実費(送料込み):1,500円 | |||
4.南部茅ふるさと物語 - 藩境の荒野にドラマとロマンが | |||
…南部茅場の由来とその長い歴史的背景の記述 配布実費(送料込み):1,500円 | |||
5.茅場の管理・利用作業必携 - 金ヶ崎茅場の保全と持続活用のために | |||
配布実費(送料込み):1,000円 | |||
6.山茅の機械刈(モトモア) 実験中間報告 | 配布実費(送料込み):1,000円 | ||
7.モーターパラグライダーによる金ヶ崎茅場の空撮リポート | |||
配布実費(送料込み):1,000円 |
茅と茅葺き相談窓口
茅葺屋根の保存のために、茅の入手や茅葺工事の請負などに関する情報を求めておられる方は、下記の窓口にご連絡ください。
会社名 | 有限会社 南部萱 〒020-0534 岩手県岩手郡雫石町川原22-1 |
WEBサイト | http://nanbukaya.jp |
電話 | 019-692-0011 |
ファックス | 019-692-0466 |
メール | kayabuki@shizukuishi.xsrv.jp (@を半角にしてください) |