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目的 岩手県内にはまだ相当数の茅葺き民家(個人住居、文化財、展示施設など)が残っていますが、屋根の修理や葺替に必要な茅が手に入らない、茅葺職人がいない、という理由で家の維持が出来なくなるという事例が多くあります。
昔は、村の茅場(共有地)で地区の各戸は毎年茅を刈り貯めておき、屋根の葺替の順番が回ってきた家には、「結い」と呼ばれる地域住民の相互扶助活動で、その地区の家が茅や人手を供出して、茅葺を助けました。また、近くに必ず茅葺き職人もいましたから、屋根の葺替は、最低限の出費で済みましたが、この仕組みは、今では、完全に消滅してしまいました。
従って、これから地域の茅葺の家を残すためには、経済問題は別にして、地元で茅を生産し、供給する新しい仕組みをつくること、茅葺職人を養成する一方で茅葺の仕事が職業として成立つような仕掛けをつくること、が必要です。今日では、もっとも効率の良いこうした仕組みは、この事業を産業にする、つまり企業化することだ、というのが私どもの結論でした。そこで、この目標に向って、2000年ころから、私どもはNPO活動を始めましたが、今日までのところ、だいたいつぎのような成果を挙げることができました。
まず、茅(ススキ)の生産については、岩手県のほぼ中央部にあたる金ヶ崎町千貫石地区の県有地のうえで、機械によるクリーニング、茅の育成管理、茅の収穫越冬、隣接倉庫への搬出、茅の保管、積み出しなどの一貫体系的企業モデルをつくりあげることができたので、そのモデルに基づく茅の企業生産が金ヶ崎町産業開発公社で行われるようになりました。岩手県も茅生産起業化の趣旨に賛成し、県有地約300ヘクタールの無償使用を金ヶ崎町に認め、付属建物を倉庫として使用することを認めました。いま「南部茅」の商品名で金ヶ崎町産業開発公社からこの茅場の茅は販売に向けられています。
茅の生産の目途がたった段階で、平成16年から3ヵ年計画で茅葺き職人の募集・研修を行いましたが、これには、岩手県・金ヶ崎町から職人研修事業の委託を私どもが受け、現場研修、視察研修、集合研修という毎年度のプログラムで職人養成を行い、5人の若手職人を育成し、南部茅葺士の称号を与えました。いま、その多くは、茅葺工事の現場で働いています。
こうして、茅が生産され、茅葺職人が育つと、これらを組み合わせて茅葺の事業を業務とする「茅葺企業」の存在が必要になります。昔は棟梁が個人企業者として茅葺工事を請負ったわけですが、茅葺きの仕事が広域にわたるようになった今日では、どうしても専門企業が必要になります。幸い、私どもの活動に刺激された若い企業家が岩手ではじめての茅葺き専門企業を立上げました。
こうして、茅の生産、茅葺職人、茅葺企業と茅葺産業を構成する3点セットが一応出揃ったわけですが、このシステムはまだ出来上がったばかりで、未成熟ですから、今後さまざまな諸課題に挑戦しなければなりません。これをどのように支援し、協力するか、これが今後の私どもの活動目標となります。
そのための一つのアプローチとして、これまで協力関係を保ってきた茅の生産企業、茅葺専門企業、古建築など木造建築専門企業、岩手茅葺き促進委員会で構成する協議会を立上げ、共通課題に取組むための場とすることにしました。委員会は、今後その事務局として活動するともに、茅・茅葺企業経営の生産性の向上と近代化を進めるための技術的経営的課題への取組み、茅葺き職人への支援、これまでの活動を通じて蓄積した各種情報の発信、茅葺需要その他の情報の収集、茅葺相談窓口活動などに力を注ぐことになりましょう。
茅と茅葺き相談窓口
岩手県内または県外の茅葺き民家や茅葺き建造物(公的施設を含む)の居住者、所有者、管理者などで、屋根の修理、葺替などに必要な茅の入手や茅葺き職人の確保に困っておられる方がありましたら、以下の相談窓口に連絡頂ければ、出来るだけ岩手茅葺き促進委員会がもつ情報を提供したいと思いますので、遠慮なくご照会ください。
茅と茅葺き相談窓口
〒020-0107 盛岡市松園1-24-10 杉若 蓉子
電話・FAX:019-661-8963
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